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2007年11月30日

【篦棒な人々 3】「正義の味方」川内康範・抜粋

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Kawauti02 『独学に勝る勉強はない』がうっかりシリーズ化してしまいましたが、ここで12月5日発売『篦棒(ベラボー)な人々』[河出文庫 ](予約受付中)の告知もさせてください。康芳夫氏・石原豪人先生と来まして今回ご紹介するのは「月光仮面」「レインボーマン」そして今年になって弟子の森進一を破門して話題になりました「おふくろさん」の作詩家である川内康範先生インタビューからの抜粋であります。川内先生は、詩人・作家・脚本家という文学者としての側面の他に、民族派運動家・自民党歴代総裁の私設政策顧問・政治評論家にして芸能界・裏社会にも通じるコワモテの人という側面があります。

今年の春先の「おふくろさん騒動」のとき、俺は先生の思い出についてエントリを立てました。そちらも併せてお読みください。

▼川内康範先生の想い出(1~2)
http://memo.takekuma.jp/blog/2007/03/post_4d0b.html
http://memo.takekuma.jp/blog/2007/03/post_b18d.html

それで、インタビューの冒頭で先生はご自分の「学歴」について話してくれたのですが、まったく偶然にも「学校なんて行かなくていいんだよ」という話でした。小学校しか出ていなくとも、大物は大物になるという、ひとつの例ではないでしょうか。なお先生は「作詞」という表記を好まれませんので、本書ではすべて「作詩」に統一してあります。

Kawauti01 ●川内康範・プロフィール

一九二〇年北海道函館市に生まれる。小学校卒業後、家具屋の店員から炭鉱夫まで二〇数種類の職業を点々とし、独学で二〇代より作家生活に。以来「愛は情死である」をテーマに、詩・小説・脚本・漫画原作・歌謡曲詩の各分野で数百本に及ぶ作品を執筆。日本初の連続ヒーローテレビ番組『月光仮面』では原作と脚本を担当し、未曾有の大ヒットを飛ばした。戦後大衆文芸を代表する巨人のひとりである。また政治思想家・民族派運動家としても若くして頭角を現わし、戦後、個人の立場で海外に抑留されていた日本人の帰国運動や、戦没者の遺骨引揚運動を展開。これが契機となって政財界に深くかかわり、佐藤栄作・福田赳夫・鈴木善幸・竹下登ら歴代自民党総裁の私的政策立案顧問を務める。その一方でアナーキスト竹中労とも親交を結ぶなど、左右を弁別しない幅広い人脈は、まさに怪物的ともいえる。政治運動家としての信念は「生涯、助っ人」。
●主なテレビ作品
『月光仮面』『七色仮面』『アラーの使者』『丹下左膳』『山一名作劇場』『レインボーマン』『ダイヤモンド・アイ』『コンドールマン』『まんが日本昔ばなし』『ドリモグだあ!』『赤い復讐』『南部大吉交番日記』
●主な歌謡作詩
『誰よりも君を愛す』『おふくろさん』『花と蝶』『命あたえて』『君こそわが命』『恍惚のブルース』『伊勢佐木町ブルース』『骨まで愛して』
●主な著作
『自我経』『憤思経』(以上、詩集)『生きる葦』『駆落ち』『私のために死ねますか』(以上、小説)『田中角栄は国賊か』『中曽根政治の検証』『慌てるなよ日本人』『姓はアメリカ名は国連』『日本は不戦の憲法を犯すな』(以上、評論)

●タコ部屋と人殺し

竹熊 小学校を出られて、すぐ社会に飛びこまれたわけですね。
川内 いろんな仕事を転々として、最終的に夕張炭鉱の坑夫になった。一七歳のとき。たまたま人夫を募集していたんだよね。前金をくれるんだよ。それをもらって友達と遊んでさ、迎えに来たトラックに乗って出かけたんだ。ところが、どこに行くんだかわからないんだよな。自分は夕張炭鉱だとばかり思っていたんだけど、着いたら、どうも様子がおかしい。
竹熊 夕張炭鉱ではなかったんですか。
川内 違う。寝る部屋もタコ部屋だったしね。山の中で穴を掘って、トンネルみたいのを作っていたんだけれど、どうも、鉱石を掘っているのとも違うんだよ。戦争に備えて何かやっていたんだろうね。
竹熊 石炭じゃなかったんですか。
川内 石炭じゃない。たぶん、軍事的なものだな。憲兵も来とったからね。何を掘っているのかは自分でもわからない。そんなこと考えている暇はないんだよ。掘らなきゃぶん殴られるからね。
竹熊 いきなりとんでもないところに……。
川内 俺のことをぶん殴る奴はいなかったけどね。でも、殴られて死んだ奴は見たよ。ある晩、一升瓶から茶碗に酒を注がれて「おい、飲め」って言われるから、しょうがないからつき合っていたんだけれども、周りでそのうち口論があってね。突然、一人が空の一升瓶でそばにいた奴の頭をおもいっきりガンと殴った。殴られた方は即死。誰も止めないのな。死体は穴を掘って埋めちゃったんだよ。
竹熊 警察にも連絡しないで、その場で埋めたんですか。
川内 そうだよ。そこでは、個々人の知識や感性なんて問題にされないのさ。獣的な力の世界だよ。気に食わない相手は殺すの。学校を出てから俺は、そんな世界を見たんだよ。それで、俺は山から脱走するんだ。必死だったよ。

(中略)

●ヤクザ相手に新聞勧誘

川内 新聞配達しながら勉強している間に、人生の裏側をいろいろ見たよな。ヤクザの親分の家とは知らずに勧誘に行ってからかわれた事件もあった。「一年取ってやっから」って言うから「契約書に判を押して下さい」と頼んだら、「馬鹿、黙って新聞だけ配達してればいいんだよ」と怒鳴られた。俺も負けじと「そんなことできるわけねえじゃねえか」とやり返したよ。
その日は雨が降っていてね。親分は「表に出ろ!」って声を上げると、いきなり二階から六、七人子分がドタドタドタと降りてきて、もう、アッという間に袋叩きにされて、頭を割られちゃった。こっちも必死でしょ、噛みついているんだよな。すると、親分が出てきて「お前ら、やめろ」って言う。「珍しい奴だな。とにかくこっちへ来いや」と呼ばれて、頭にビールをかけられた。
「いい度胸してるじゃねえか」とか、ありがちな台詞を言われたけど、こっちは「とにかく判を押せ。相手がヤクザであろうと関係ない。俺は自分で新聞配達をしながら勉強しているんだ」って血を流しながら言った。夕張ではひどい目にあっているしね、修羅場をくぐってきた自信みたいなものがあった。とうとう親分は「新聞取るよ」って折れたよ(笑)。
竹熊 あまりの気迫にヤクザの方が根負けしたわけですね。
川内 その事件で殴られることの怖さを覚えたね。殴られたら最小限に防御しなければいかんわな。死なないようにな。その頃は、めちゃくちゃ喧嘩をしてましたよ。
一度、相手が謝るから許してやったこともあったけれど、喧嘩やるんだったら、中途半端に許しちゃダメだ。こっちが許してやったのに、その野郎は俺のことをつけ狙って、新聞配達どころじゃないんだから。喫茶店にいようが、どこにいようがドスを持って襲ってくる。とうとう最後には、後ろから刺されちゃったよ。それから、俺は喧嘩となったら相手が謝ろうが何しようが徹底的にやっつけるようになった。相手に余力を残してあげるような妙な慈悲をかけると、あとで自分がひどい目にあうからな。

(中略)

●空襲の中を皇居へ走る

川内 どんどん戦局が不利になってきた。空襲も激しくなってくる。ある日、都心が空襲で激しくやられていて、B29に皇居が爆撃されているんじゃないかと思ったことがあった。焼夷弾の中身は生ゴムみたいにベタベタして、広範囲に散らばって、よく燃える。東京大空襲なんて戦争じゃない、あれは虐殺だ。みんなただ逃げまどうだけなんだ。米軍の爆撃は明らかに民間人を狙っていた。一〇〇機、二〇〇機で来るんだよ。空襲にあって皇居が燃えていると思ったとき、俺は天皇を助けようとした。「陛下が危ない」ってね。それで、中目黒から日比谷まで走ったよ。しかし、空襲は実に巧妙に行われていた。皇居は無事だったんだ。
竹熊 先生は国家権力に疑問をもたれていたわけですよね。それでも天皇を助けようと思われたわけですか。
川内 国家権力に対して強い反感を覚えていたのは本当だよ。でも不思議なことに、天皇は守らなければと思っていたんだ。陛下が戦争を奨励しているというのは、自分にはどうも納得いかない。そういう疑問があった。軍閥や政治家の連中と天皇陛下ではまったく考えが違うんじゃないかという気がした。陛下はどこかに幽閉されているかもしれない。周りの連中に利用されているのかもしれない。そう考えていたんです。

(中略)

●大ヒット『月光仮面』

川内 当時、アメリカの『スーパーマン』がありましたよね。これが日本でも放送されて、大変人気だった。弱者を助ける、その点においては月光仮面と一致するんです。でも、それ以外は別なんですよ。俺はヒーローを超能力者にする気はなかった。あくまでも人間でなければいかんと。そこで、私立探偵の祝十郎が出てくる。祝が月光仮面じゃないかとみんな思うわけだが、はっきりしたことは誰にもわからない。
竹熊 タイトルには月光仮面の役者名が「?」ってなっていますよね。
川内 顔をなかなか見せてくれないでしょ。最後には見せますけれどね。顔を見せるところで終わるんです。死んでいく人だけが見た顔なんですよ。
竹熊 月光仮面の発想はどこからきたのでしょうか。
川内 それは月光菩薩という仏に由来しているんだけど、月光菩薩というのは脇仏でね、決して主役じゃないんだ。つまり、裏方なんだな。だから“正義の味方”なんだよ。決して正義そのものではない。この世に真の正義がいるとすれば、それは神か仏だよな。だから月光仮面は神でも仏でもない、まさに人間なんだよ。
竹熊 そこで名キャッチフレーズ“憎むな、殺すな、赦(ゆる)しましょう”が出てくるわけですね。
川内 みんなが戦争をだんだん忘れていくと思ったから、まず“憎むな”と言った。戦争を起こしたらいかん。人を殺したらいかん。いつまでも憎しみの心を持ったままだとえらいことになる。日本が経済的に発展すればするほど日本民族の純粋な魂というものを失うんじゃないか。憎しみからは何もいいものは生まれない。だから相手を“赦す”ことが必要なんです。これは何も日本人だけに言っていることじゃないんです。万国共通のテーマですからね。日蓮も釈尊もキリストも、みな同じことを言っているんだ。真理はひとつなんだよ。

◎1「虚業家」康芳夫・抜粋→★
◎2「元祖やおい」石原豪人・抜粋→★





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“【篦棒な人々 3】「正義の味方」川内康範・抜粋” への8件のフィードバック

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  6. ニュース22 より:

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  7. 川内康範

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  8. 川内康範

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