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2008年11月23日

オンライン(無料)マンガ誌、花盛り

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「マンガ雑誌に『元をとる』という発想はない」の続きであります。前回俺は、「マンガ誌単体では最初から大赤字で、版元も折り込み済み」であること、「雑誌は大赤字でも、単行本が売れるので、版元も作者も、そこではじめて利益になること」を書きました。ここから導き出される「マンガ雑誌の目的」とは、

(1)単行本を出すための、原稿プール機能
(2)単行本が出たときの、作品の宣伝機能

のふたつあることがわかります。これは版元・作者ともに共通のメリットでしょう。実はこれ以外の大きな目的として、

(3)新人の発掘と育成

があるのですが、これはとても大きなテーマですので、今回は項目を挙げておくにとどめます。今回俺が考えてみたいのは、これまで機能していた、こうした雑誌のあり方に亀裂が生じてきたこと(要するに雑誌ばかりでなく単行本も売れなくなった)で、今後のマンガ雑誌とマンガ界(出版界)はどうなっていくのかということです。

まあ話がでかくなるので、結論は出ないかもしれませんが、問題提起だけでもしておきたいと思います。

さて今のマンガ界の最も大きな問題は、単行本が売れなくなったことに尽きます。これまで俺を含めてさんざん語られていた「雑誌が売れなくなった」ということ自体は、版元にとって実は大きなダメージではなかったかもしれない、ということは前回のエントリで書いた通りです(ダメージには違いないが、たぶんダメージのヒエラルキーとしては一番上ではない)

つまり雑誌が売れなくとも、単行本さえ売れているなら大きな問題にはならないと言えるのです。ところがここに来て雑誌が売れないことがたびたびマスコミの話題になり、実際に休刊に追い込まれる雑誌も出てきています。これはどういうことなのでしょうか(※)

※ 休刊ラッシュは一般雑誌のほうがひどいですが、これは不況による広告出稿の落ち込みが原因でしょう。マンガは広告とはほとんど関係ないので、やはり単行本の売れ行き不振が原因だと思います。

これはつまり、単行本が売れなくなったので、単行本の補完媒体である雑誌を維持することができずに休刊に追い込まれた、と考えるのが正しいのではないかと俺は思うわけです。もちろん、これ以外にも理由はあるとは思いますが…。

問題は雑誌がなくなってしまうと「原稿プール機能」が消滅するので、ドル箱である単行本(新刊)が出せなくなってしまうということです。戦後から昭和30年代までは赤本や貸本マンガといった描き下ろしマンガがありましたが、昭和40年代に大手出版社が極端な薄利多売システムを確立したことで、描き下ろしのインディーズ出版はいったん全滅した経緯があります(コミケという形で復活しましたが)

さて、しかしマンガがドル箱であることには変わりありませんから、出版界も手をこまねいているばかりではありません。さまざまな動きがあるようですが、特に目立つのがインターネットによるオンライン雑誌の模索であります。

これはケータイコミックとは意味が違っています。ケータイコミックは、作品の一話だけを安価にダウンロードでき、あくまで携帯で気軽に読むためのものです。新作もありますが、ケータイコミックの主流は旧作を携帯向けに編集し直した、「旧作の再利用」にあるといえます。

ところが今始まっているオンラインマンガ誌は、PCの大画面でマンガをより原型に近い状態で読めるようにしたもので、さらには作家に原稿料を払ってオンライン上で完全新作を読めるようにしているものもあります。そして、ここが肝心なのですが、多くは「無料(制限付き無料)」で読めるということです。

極論しますが、出版社としては、単行本が売れさえすれば雑誌は無料で公開してもいいということなのです。しかもウェブサイトは紙の雑誌に比べれば、維持費用がタダみたいに安くなっています。あとは「宣伝効果」さえ確保できるならば、すぐにでもオンラインに移行したい、というのが経営陣の本音かもしれません(※)

※ もちろん大部分の社員は紙媒体の経験しかない人ばかりですので、実際にそんなことをしたらものすごい労働争議になります。まあできないでしょう。ということは、マンガ界に新規参入を目論むベンチャー企業にはチャンスなのでは?

現在、出版社が運営しているオンライン・マンガ誌と呼べるものには、以下のものがあります。

●講談社「モーニングツー・オンライン」
http://kc.kodansha.co.jp/SEP/22226/01/free/index.html

 

●双葉社「WEB漫画アクション」
http://webaction.jp/

●スクエアエニックス「ガンガンonline」

http://www.square-enix.com/jp/magazine/ganganonline/

俺が見落としているだけで、たぶん他にもあると思います。もちろん書店売り雑誌の「公式サイト」なら、以前からありました。そうした公式サイトは、宣伝目的が主で、「作品を読みたければ、雑誌を本屋さんで買ってね」というものがほとんどでした。

ところが昨年あたりから顕著になってきたこうした「オンライン雑誌」は、書店売りの雑誌が期間限定で無料で一部、ないし全部が読めたりすることが特徴です。また双葉社の「web漫画アクション」のように、紙媒体の本誌とは別に、オリジナルコンテンツとしての新作マンガが丸ごと読める(しかも無料)というオンライン雑誌も増えてきました

ここにあげた以外にも、小学館や集英社でも連載や単行本の一部を無料で「立ち読み」できたり、有料会員になれば全部読めたりするサービスを行っています。

●小学館「ソク読み小学館」
http://sokuyomi.jp/

●集英社「MANGAオンライン」
http://annex.s-manga.net/manga-online/

こうした動きは、2~3年前から顕著になってきました。俺は最初、雑誌の売れ行き不振がいよいよ深刻になってきたので、作品宣伝をオンラインでカバーする目的なんだろうなと思っていたんですよ。

ところが双葉社やスクエアエニックスなどは、作家に原稿料を払った新作を、オンラインで無料で連載することを(まだ一部の作品ですが)始めていて、あれれ、と思ったのです。これはもしかして、紙雑誌に見切りを付ける前兆かもしれないと。だって、「単行本のための原稿プール機能」までオンラインに持たせることになったら、紙の雑誌を出す意味がないですから。

まあ、まだ紙媒体の雑誌をすべて廃止した版元は出ていませんので、今のところは各社ともに様子見の段階なのだと思います。この動きが今後どうなっていくのかまだわかりませんが、注目していきたいところです。

さて、オンラインマンガ誌は、紙雑誌の代替を探る試みですから、最終的には「紙の単行本を出して、それで儲ける」というビジネスモデルに違いはないわけです。ビジネスとしては、現状それしかとるべき手段はないと言えます。

しかしそのことで個人的に残念に思っているのは、「ネットに特化した真のデジタルマンガの進化が後退していくこと」です。

どういうことかというと、昨年春、「少年ジャンプ」編集部が先行投資的に無料公開していた「ジャンプデジタルマンガ」のサイトが更新を停止してしまったことを、俺は残念に思っているのです。

●「ジャンプデジタルマンガ」
http://jump.shueisha.co.jp/henshu/JDM/index.html

これは少年ジャンプ編集部が、マンガのデジタル化時代を見据えて2002年から始めていた「ジャンプデジタルマンガ大賞」から派生した集英社の公式サイトで、PCでしか制作・表現・閲覧できないようなマンガ作品を発表していくというものでした。

このサイトの凄かったところは、デジタルマンガ賞の受賞作家に原稿料を支払って連載させ、それを無料で公開していたことです。それらの作品はすべて、現在もサイト上で読むことができます。

「ジャンプデジタルマンガ」で連載していた、ふかさくえみさんの『マルラボライフ』を見ると、フラッシュを使って制作されているのですが、コマ割りがあって、クリックによってコマが現れたり音が出て一部がアニメとして動くなど、マンガ・アニメ・ゲームの要素が渾然一体となっています。

「オンラインで読むマンガとはこういうものだ」という見本みたいな作品なんですが、残念ながらサイト停止にともなって連載も中断してしまいました。

おそらく、いくら連載を続けても、こうした種類の作品市場が存在しないので、パッケージ化の目処が立たないということで中止になったのでしょう。しかし作品はサイトに残して誰にでも閲覧できるようにしているところに、ジャンプ編集部の良心と無念な思いを察することができます。

「ジャンプデジタルマンガ」は、大手版元が行ったものとしては完全な先行投資であり、現在各社が進めているマンガ雑誌のオンライン化とは、目的からして無縁なものです。しかし雑誌のオンライン化がますます進み、紙媒体の雑誌が絶滅した(するかもしれない)未来には、初期の貴重な試行錯誤の例として、歴史には残っているのではないでしょうか。

ちなみに『マルラボライフ』のふかさくえみさんからは、俺の同人誌『マヴォ』に新作を寄稿していただきました。ありがとうございました。

★ふかさくえみさんの『マルラボライフ』は、彼女のサイト「すこやかペンギン」内に4コマ作品として連載されています。
http://www.asahi-net.or.jp/~sb9e-fksk/

★森本 護さんの『ストレートガール』も、作者自身がサイトを立てて続行中です。http://www.straight-girl.com/

(※この話題はもう少し続きます)


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