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2009年9月4日

『忍者武芸帳・影丸伝』復刻!

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Ninjyabugeityo01_2 ↑忍者武芸帳影丸伝 1 復刻版 (レアミクス コミックス)

白土三平の代表作『忍者武芸帳・影丸伝』が小学館クリエイティブから復刻されました。

小クリと言うと、この春にあの『新寶島』(手塚治虫)を完全復刻して業界をあっと驚かせましたが、この『忍者武芸帳』も、マンガ史的には『新寶島』と同じくらい重要な作品だと言えます。

その昔「貸本マンガ」という、今は絶滅した分野がありました。『忍者武芸帳』は、貸本マンガ史上最大のベストセラーと言われていて、白土三平の名前を一気に有名にした代表作にして出世作であります。この作品の担当編集者で、版元(三洋社)の社長だったのが長井勝一。

長井は後に青林堂を創業し「ガロ」を創刊します。「ガロ」は白土の『カムイ伝』を連載させるために作った雑誌でありまして、これも白土の代表作になりました。これはつまり、『忍者武芸帳』の成功なくしては「ガロ」も『カムイ伝』もなかった、ということであります。

『忍者武芸帳』には『影丸伝』というサブタイトルがつけられていますけれども、これは作者の白土が最初につけたタイトルだとか。しかしこの時は長井勝一が「聖書みたいで、売れそうもない」と却下したそうですが、後に長井は「忍者武芸帳は凡庸な題だったかもしれない。影丸伝の方がよかった」と後悔したと伝えられております。そのため『カムイ伝』のタイトルはすんなり通りました。

『忍者武芸帳』は、戦国の世を背景に、影丸という、どの大名の勢力にも加担しない謎の忍者をめぐる物語であります。影丸は大名に帰属しないばかりか、各地の百姓を組織して百姓一揆を煽動するチェ・ゲバラのような革命のリーダーとして描かれます。このため諸国大名からはさかんに命を狙われるのですが、影丸は、何度殺されても必ず蘇る不死身の忍者なのです。このため、織田信長が最も恐れた人物として描かれます。

「不死身」というのは、これ以前からも無数に描かれていたスーパー・ヒーローの代名詞みたいな性質ですけれども、『忍者武芸帳』が画期的だったのは、ヒーローの不死性にある合理的な理由を与えたところです。それが何なのかは、作品のテーマと深く関わっているのでここでは書けません。

しかし当時の読者は、主人公の超人ぶりに理由があったことに驚いたのでした。そして、おそらくそれが理由で、影丸は一躍学生運動のヒーローになったのです。人間である以上、スーパーマンになることはできなくても、影丸にならなれるかもしれないと思わせるものが、このマンガにはありました。

この作品は1959年に第一巻が発行され、1962年に全17巻で完結しました。俺は60年生まれなので、オリジナルの貸本版は読んでいません。俺が読んだのは、中学生だった73年頃で、小学館から箱入り豪華本で出た、最初の完全復刻版(※)で読んだのです。カラーページまで再現した完全復刻は、今回が二回目ということになります。

※コメント掲示板で読者の方が教えてくださったのですが、70年代に出た小学館の版は「復元版」で、原本からの完全復刻は今回が初めてだそうです。

http://www2.atchs.jp/test/read.cgi/takekumamemo/193/2-2

ただこの時の復刻はかなり高価で(普通の新書コミックが200円くらいの時に800円以上した)、中学生の俺には手が出ず、とりあえず立ち読みしたわけなんですが、一巻目を読んでそのあまりの面白さに止まらなくなり、その日は店内で5時間ほどかけてとうとう全巻読破してしまいました。

それだけで止めておけばいいものを、俺はそれから一週間毎日同じ店に通って、5時間かけた全巻立ち読みを6~7回続けたのです。当時住んでいた千葉県旭市の、三河屋書店さんには本当に申し訳ないことをしました。金がないとはいえ、豪快すぎる立ち読みを続けた俺も俺ですが、その行為を黙認していただいた店番のおばさんにも感謝の気持ちで一杯であります。あの立ち読み体験がなかったら、後の竹熊健太郎は存在しなかったかもしれません。本当にごめんなさい。

白土三平は、それまでにも少年誌に連載されていた『サスケ』『ワタリ』『カムイ外伝』で知っておりましたが、『忍者武芸帳』は子供向きではない純粋な「劇画」でありまして、その情け容赦のない残酷性とテーマ性、そして極上のエンターティメント性(要するに“面白い”)には覿面にやられました。マンガ好きとしての俺を「キャラで読むマンガ」から「作家で読むマンガ」へとグレードアップさせてくれた、大変重要な作品なのであります。

今でも「文句なく面白いマンガをひとつ挙げろ」と言われたら、俺は『忍者武芸帳』を挙げます。


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| コメント(3)

“『忍者武芸帳・影丸伝』復刻!” への3件のフィードバック

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