たけくまメモMANIAX

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2005年2月16日

[電]とにかく方針を決める

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実は昨晩「私の裡(うち)なる電車男」というタイトルで、あえて素直な感想を書こうとしてみたのですが、何行か書いて

_| ̄|○

状態に陥ってしまいました。ほら、以前からオタク系の事件が起こるとこういう論調の文章があったじゃないですか。「宮崎勤はボクだ」とか「私もオウムに入っていたかもしれない」とか「シンジくんは俺だ」みたいなやつ。俺も、実はそういう文章を得意にしてまして、オウムをネタにした『私とハルマゲドン』なんかそれの集大成だったんですが、今回はさすがにこれだけで突っ走るのは辛くなりました。

いや、たぶん本番の文章でもそういう部分は入ると思うんですけど、ある種、これはこれでパターン化してきたというか。それに電車男って、オタクではあるけれど、ある意味宮崎とかオウムとは逆パターンですよね。宮崎やオウムはオタクのネガティブなパワーが前面に出ましたが、電車男はオタクが「普通になる」方向の話だし。オタクがなんとなくネガティブな扱いをされているのは同じなんですが、ハッピーエンドというのが今回は違うんですよ。

しかし、電車男がこれだけのベストセラーになり、今でも話題が持続しているということの根本には、やはり「オタク」というキーワードがあるのだと思う。経験上、オタクという言葉に一番過敏に反応するのはオタクですからね。しかも、ここが面白いんだけども、オタクというのは、自分はオタクではあるけれども、他のオタクとは実は違うんだ、と心の底では思っているということです。

だから、多くのオタクには、自分自身や他のオタクのことをいったんカッコにくくってしまって、まるで評論家のように語ろうとする傾向があるように思います。それが自己に向いた場合は、必要以上に自己卑下する態度にも結びつく。要するに、オタクはプライドが高いんです。韜晦的態度とか、自己を卑下できるというのは頭がよくなければできませんから、プライドの現れだと思うんですよ。

しかし一方では、まったくオタクを理解しようとしない外部の、たとえば大谷昭宏みたいなTV文化人の無理解発言には強い反発を持つわけです。お前はオタクを理解していないと。いや、確かに大谷さんの「フィギュア萌え」発言はアホでどうしようもないと俺も思いますが。ただこう、死にもの狂いで自己卑下しながら、外部から同じ事言われるととたんに怒り出すのがオタクの面白いところです。俺自身オタクなので、昔からこの問題を考えていました。

こういう「オタク」を無意識にカッコでくくるオタク自身の態度のことを、俺はかねてから「オタク密教」と呼んでいるのですが、今回の『電車男』現象もまた、オタク密教と密接に関連しているように思うわけです。

電車男を読んで面白いと感じるのは、多少なりともオタク的傾向を持つ人だと思う。でも内容は異性スキルのないアキバ系青年が「脱オタ」してまっとうな恋愛を成就するという一種の成長ストーリー、教養小説でしょう。しかもそれだけではなくて、脱オタに力を貸したのが2ちゃんねるの無名のオタクたちだ、というのがこの本のミソなわけで(一部、オタクではない人も混じってたようだが)。つまり、少なくともあのスレッドに集った2チャネラーは、その瞬間は電車男に自己を仮託して、本気で応援していたんだと思う。だからこそ、あれだけ感動的なストーリーになった。

でも一方脱オタが「上がり」というあたりで、オタクは複雑な心情を抱くのだと思う。それで、「作品」がいったん完結して本が出て、第二ラウンドとして「真贋論争」が起こったのではないでしょうか。いくらなんでも、こんなにうまく展開するはずはない、だからヤラセなのだと。

このへん、プロレスの「ガチ-ヤオ論争」に似て無くもない。というか、本質は同じだと思う。とにかく、ものすごく複雑な心情が『電車男』を支えているので、これを解読するのは正直、骨ですね。つか、ゆうに一冊の本が書けるくらいなので、そもそも3000字かそこらでまとめるのは困難なわけですよ。といいわけはこのくらいにして、一応この線を踏まえたうえで、「電車男の語られ方」みたいな方向でまとめてみたいと思います。

※つづく→

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| コメント(40)

“[電]とにかく方針を決める” への40件のフィードバック

  1. たけくま より:

    ちょっとスイッチが入ってきました

  2. 無名人 より:

    締切に間に合いますか?心配です^^
    って、会社からこんなこと書いている俺自身も自分を心配しなければ・・・・^^;

  3. 本田 より:

    「脱オタ」があがり→論争化というパターンにデジャヴを感じたと思ったら、エヴァでした。orz

  4. たけくま より:

    ↑おお本田さん。「キモイ伝」面白かったです。
    『電波男』も期待してます。

  5. ごま より:

    私は梗概を眺めただけで、ちゃんと「電車男」を読んでいないのですが(マテ)、
    なかなか興味深い掘り下げ方だとおもいます。

  6. 居士 より:

    ・・・これって依頼された原稿の内容とどの程度重複しているのでしょうか??はっ・・・まさかっっ
    実は原稿とまったく関係いとしたら・・・テラワロス!
      それはともかく、自分自身のオタ属性とも共鳴して読んでいて非常に興味深い面白いテキストですよ、コレ。

  7. 足塚茂道 より:

    「脱オタ」があがり→論争化が
    面白い発見だなぁ~と思いました。
    脱童貞したての頃に、追求されるようなものですね。
    個人的にはオタクの理想の恋、現実の恋、
    オタクOB達みたいなコラムを読んでみたいなぁ
    と思ったのですが、
    スイッチ入った竹熊先生のお邪魔に
    ならなければ??と思います。
    漫談2も楽しみに待ってます^^。
    1は原稿料のところが60年代
    70年代のマンガ事情を
    知らない僕としては、面白かったです。
    マンガの批評は、しらない漫画も多く、
    チラッとでも見たことある作品の批評は
    読むのですが、それ以外のところは、
    流し読みしちゃいました。

  8. BB より:

    たけくまさんハジメマシテ。
    僕は電車男を読んでヤンサンに載ってた「Bバージン」とか、民話の「泣いた赤鬼」とか映画の「がんばれベアーズ」とかを思い出しました。あと、昔の乙女チック少女マンガの男女設定を引っくり返した感じ。コンプレックスのある主人公とか、キスしてハッピーエンドが王道だったじゃないですか。

  9. 電池 より:

    確かに少女漫画的ですよね。
    突然ヒロインの目の前に現れたかっこいい先輩に一目惚れ、
    でも取り柄もないしメガネっこでかわいくないヒロイン、
    引っ込み思案で自分からは声かけらんない、
    友達に励まされてメガネはずしてお化粧したら大変身、
    先輩からデートに誘われて大はしゃぎ、
    最後はキスされてハッピーエンド。
    モノローグ過多なところも少女漫画的ですね。

  10. こま より:

    ども。
    女の自分から見ると、電車男は恋愛経験のない純粋な青年が、年上の女にいいように手玉に取られていくのが手に取るようにわかるストーリーなので、男サイドの微笑ましいエピソードと、女の側の語られないダークな計算高さを(自分で勝手に補間して)みて、その対比に戦慄をおぼえますです。
    原稿がんばってくださいね。

  11. toroeppa より:

    >死にもの狂いで自己卑下しながら、外部から同じ事言われるととたんに怒り出すのがオタクの面白いところです。
    それは2ちゃんねらーなんかにも感じますね。スレ内では「2ちゃんねるに書き込んでるような俺たち」を自嘲しながら、
    マスメディアや文化人からの2ちゃんバッシングには反発する。
    まぁそこで「2ちゃんねるなんて元々そんな上等なもんじゃないだろ」というツッコミも入るんですがね。
    2ちゃんねるみたいな不特定多数が入り乱れてメタ化し合うメディアはオタクのオタク語りを
    さらに複雑化させたようなもので、それらを総括して語ろうとするのは難しい事だと思います。

  12. KAT より:

    若干はずれますが、2ちゃんねるのメディア論に関しては、最近「ちゆ12歳」さんで紹介された記事「バトルウォッチャー・哭きの竜さんの12年」が興味深いです。
    以下引用。
    >2ちゃんねる以前のバトルは個人と個人との戦いだった。彼らは互いの主張をぶつけ合い。泥沼の論争になり、そして潰しあい。時には裁判沙汰になった。
     (略)
    >2ちゃんねるでは、ほとんどすべての人々が名無しさんである。一つのスレッドに彼らが何人いるのか、そもそも何者なのか、誰にもわからない。
    >2ちゃんねるでカキコしている名無しさんたちは個人と言えるのだろうか? そもそも、彼らは人間と言えるのだろうか? 2ちゃんねるで日々膨大なカキコを吐き続ける名無しさん……わたしはこれを「電網群生生命体」と呼んでいる。「全にして個、個にして全」の存在である名無しさんはパソコン通信の古代から続いたネットワーカーの進化の最終形態なのだ。
     (略)
    >この電網群生生命体は、ネット史上最強の存在である。わたしがかつて観てきたいかなる論客、いかなるバトラーよりも強力だ。なにしろ、名無しさんは誰なのか何人いるのかさえわからないから叩かれた方には反撃をする術がない。固定ハンドルは一方的に叩かれるのみである。
    長くなりましたね。すみません。

  13. KAT より:

    連投あいすみません。
    上記の記事に対し、紹介者であるちゆは「もちろん、参加している名無しさん一人一人の側からはまた違う世界が見えるでしょうし、別に2ちゃんねるはバトルするだけの場所ではありませんが、外部からの視点で、2ちゃんねるをバトラーとして見た分析としては面白いと思います」と評価しています。
    電車男という作品は、おそらくこの「電網群生生命体」なるものがつくりだした一種の理想の物語なんでしょうね。

  14. ああ より:

    >「作品」がいったん完結して本が出て、第二ラウンドとして「真贋論争」が
    うーん真贋論争はどちらかというとオタクでないひとのほうが熱中している感じがするのですが、どうでしょ

  15. 居士 より:

    伸びてきた伸びてきた
    と い う こ と で 記 念 カ キ コ
    マァ、ガンガレ
        ○
        ノ|)
    _| ̄|○ <し

  16. 聞きかじり より:

    真贋論争というほどのモノかは判断をお任せしますが、電車男生LOGを見ると、ネタ派は当初からいたそうですよ。ID検索してる輩なんかも途中で出てきてるし。

  17. おーさわ より:

    たけくまさんが「電車男」を語る気が起こらない一番の理由は、「電車男」を好む層がオタク層ではなく「世界の中心で~」を好む層だからではないですかね。オタクがあの物語に自分を重ねるとは思えないし。

  18. nanashi より:

    ブログに書くつもりの電車男論を間違えて編集者に渡してしまったという方向にすればよかったんじゃないでしょうか

  19. >自己に向いた場合は、必要以上に自己卑下する態度にも結びつく。要するに、オタクはプライドが高い
    ここには凄く共感いたします。「俺は一般人とは違うぜー」と言う部分と「どうせ俺なんて」と言う二面性があるようにも思います。
    ところで原稿は上がったのでしょうか(^^;) ここ数件のたけくまさんのエントリのリアルタイム性が臨場感があって面白いです。
    #「オタクと恋愛」ってわりと琴線に触れるようで、僕のblogでも「オタクをやめる」で検索して辿り着いて来る人が日に何人か居ます(笑) ちょっと前のエントリなんですがトラックバックさせていただきますね。

  20. 人がオタクをやめるとき (再掲)

    #オタクつながりで2003/5/12の日記の再掲しとく 岡田斗司夫の説だったと思うが、オタクは人生の中で3回「オタクをやめるチャンス」があるという。 1つめは小…

  21. にっく より:

    でも脱オタって恋愛幻想も強いから、一通り経験して「うん、こんなもんか」ってわかったら
    脱オタではありつつもまたオタの方向にシフトしていくような気がします。
    いや、経験談なんですけど。

  22. nomad より:

    脱オタはありえない。と思う。
    オタクは生活態度ではなく「血」だからだ。
    「血で飛ぶの」とオタクは言う。
    押入れの中一杯の軽トラ一杯分のプラモを僕にくれた友達がいるけど、今、彼は結婚してまっとうな人生を…
    歩もうとしているように見えて、実は食玩なんかを集めだしている。「いや、これは小さいし、安いし手軽だし」って言うけど、やっぱりコンプリートを目指しちゃったり。
    かく言う僕も結婚して子供もいるし、会社勤めをしてるけど、背広姿の自分を「サラリーマンのコスプレ」って思っている。
    だから電車男も「普通人のコスプレ」を楽しんでいるんじゃないかと思うんだよね。そのうちボーンチャイナのカップの蒐集とかし始めるんじゃないの?

  23. nomad より:

    2chってのはとってもアジア的、日本的なコミュニティだと思う。
    匿名でいようとする姿勢、コミュニティ全体の全体性、スレの流れ、群生生命体なんていう見方が、個として生きるよりも社会の一部として生きている僕らの姿を反映してると思うよ。

  24. syuu より:

    16日もそろそろ終わりますが・・先生・・(;・∀・)??

  25. ふぉあぁ より:

    あっ 日付が変わった…。締め切りは???
    今回の方針ログで 読んでみたい気メーター 振り上がりました。
    なんか 「特報!」「執筆好調!」って予告を見せられている気が…。
    私は乗せられている?

  26. 居士 より:

    う~~~~む、恐らくたった今苦しんでいると思われ。
    マア、ガンガレ
    p.s.
    10年目のエヴァ、激しくGJだと思いますた。

  27. vio より:

    少しプロレスで思いついたのですが、こう何というんですか…構造的にWWEのやってるプロレス・エンタテインメント路線に似てるのかなァ?と思いつきました。アチラは裏の脚本家が何十人かいるらしくて、シナリオに則って興行している。そして観客はその事は分っていながらも、巨大なプラカードを掲げて選手やオーナーに喝采を送ったり、またはブーイングを浴びせたり、と。(ヤラセだと)分かってはいても、こう盛り上がるリング側と観客側の一体感。ここに「電車男=WWE説」をデッチあげてみるが、もう遅いですかそうですか。

  28. Mass より:

    僕は竹熊さんのテキストに心酔する一方で、重度のプロレスオタですが「ガチーヤオ論争」の汎用は(近年、その境界線やジャンルそのものの立ち位置が激しく揺れ動いてる為)若干、危険性をはらんでいる気が致します…。
    深夜、大変、失礼致しました。

  29. 匿名 より:

    ここで、電車男あらすじの簡単なおさらい
       電車男
        ↓  ○ ←名無し
           ノ|)
      _| ̄|○ <し
            ○ノ
         ○ ノ|
      _| ̄|  <し
         ○ ○ノ
         人 ノ/
         〉 />
         ヽ○ノ ヽ○ノ
          /    /
         ノ)   ノ)
    で↓
              ヽ○ノそのまま去った
               /  電車男
     _|\○_     ノ)  
    残された名無し

  30. mouiiya より:

    電車男ってさあ…

    電車男って、これじゃん。

  31. ヒトヨニ より:

    オタクや2ちゃんねらのほとんどは「電車男」に否定的。
    まず実話として書籍化したのがまずかった。
    存在が確認されたのは「電車男」だけ・・・。エルメスはどこにいるんでしょうか?
    2chの書き込みを実話といっても信じてる人は少ないですよ。実際にネタ派のサイトのは、あるのにガチ派のサイトはないし。
    それから出版経緯や著作権に問題があるようです。第三ラウンドは「印税論争」で。
    私のサイトも参考にって、ドロドロしたものを見せたら仕事し使えがありますか??

  32. Apocalypse より:

    ・ファミ通のアレ(仮題)

    ファミ通のアレ 1 (1)
    ファミ通のアレ(仮題) 2 (2)
    ファミ通のアレ(仮題) 3 (3)
    今日付でリンクを一件追…

  33. 居士 より:

    そろそろ現況レポ期待age(あがんないって^^;)

  34. 匿名 より:

    匿名掲示板の著作権について語っても面白いかも
    グレー扱いしてきたものだけど
    法律読むと実は黒
    ただ、親告罪だからスルーされているだけ
    でもさ、出版社がそんな法律無視した出版ていいのかしら?
    誰も触れてないから触れてほしいなぁっと

  35. ああ より:

    >実際にネタ派のサイトのは、あるのにガチ派のサイトはないし
    それこそがむしろネタ派が圧倒少数であることの証のように思えるのですが、どうでしょ

  36. たけくまメモ効果

    久々にアクセス解析をウオッチ。凄い、昨日たけくまメモにトラックバックした「人がオタクをやめるとき」に一晩で300件くらいアクセスがあった。(先方からのリンクでは…

  37. 自転車男【妄想の段】

    君子危うきに近寄らず、私がその場を去ろうとした瞬間、その男はやおら、自転車を持ち上げ両肩で担いでしまったのだ、いわゆるアルゼンチンバックブリーカーの体勢だ。私は…

  38. ヒトヨニ より:

    >>実際にネタ派のサイトのは、あるのにガチ派のサイトはないし
    >それこそがむしろネタ派が圧倒少数であることの証のように思えるのですが、どうでしょ
    圧倒的がどうかわかりませんが、一般の読者の方は、感動できるいい話なので、ネタガチはどうでもいいという人が多いです。
    感動的な話なのでその真偽を問うのは野暮でしょう。小説「電車男」ですから。
    ただ、著作権の問題は別ですよ。
    電車男のヒットで他人の善意やプライバシーが、本人に無断で書籍化され金に変えられていくこともありえますから。
    って、人のブログでこういったことを議論するのは野暮ですね。ファンブック期待してます。

  39. 匿名 より:

    ヤオというやつはキモオタだけかYO!
    一杯のかけそばだって感動作だよね!

  40. 『ジェネレーションG(仮)』-4

    クワトロに「無粋な男とは目を合わさないのだよ、お嬢様は」というセリフを言わせてみたい。どういうシチュエーションでのセリフかは思いつかないのだけれど。。。新日曜美…

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