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2006年3月8日

長崎尚志さんに会ってきた

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昨日のことですが、たぶん日本で唯一「マンガプロデューサー」を名乗っている長崎尚志さんに会ってきました(いや、大塚英志がいたか?)。80年に小学館に入社してから、いきなり手塚治虫、さいとう・たかをなど超大物の担当を歴任、そして浦沢直樹氏の才能を見いだしたという業界ではかなり有名な人です。

現在も浦沢氏の創作パートナーとして『20世紀少年』のストーリー協力や『プルートゥ』をプロデュースしたり、他にも東周斎雅楽などの名義で「漫画脚本家」としても活躍されております(氏は原作者という言葉を好まない。このへんはさいとう・たかを流)。

長崎さんはこれまであまりマスコミには出なかったので、いろいろ謎も多い人だとされていました。今も「原作者」なのか「編集者」なのかよく分からない人と言われますけど、俺に言わせれば氏もまた「編集家」であります。会社員時代から、非常にクリエイティブな側面で作家と対峙する人だったわけです。まあそもそも、マンガ編集者とは作家と一緒にネタを考えることが重要な仕事の一部でありまして、他の出版分野(文芸など)に比べても特に高いクリエイター的能力が要求されるのは確かなんですけど。

浦沢直樹さんとの関係も、昔から「もうひとりの浦沢直樹」などと言われるくらいでしたが、その言葉は半分本当で半分間違い。もちろん、作品の最終決定権を握る「監督」は浦沢さんであるわけですが、それでも長崎さんがいなかったら今の浦沢直樹はなかったでしょうし、同時に反対の言い方だって出来るわけです。マンガ家と編集者が二人三脚でひとつの作品に取り組むことには、たぶん世間が思う以上に深くて強烈なものがあります。とかく誤解を招きやすい領域の話でもありますし、この辺を正確に説明するのは難しいんですが。

夏目房之介さんもかつて浦沢直樹氏を取材したとき、長崎さんとの関係に注目し、「共同製作者」としてのマンガ編集者の特異性に言及しておりました(「AERA」現代の肖像・浦沢直樹 04年4月4日号)。これはひとえに浦沢直樹と長崎尚志の関係にとどまるものではなく、表には出ないながら、多くのマンガ家にも当てはまることであります。

俺はたぶん16年くらい前から長崎さんを知っているのですが、正直、小学館社内ですれ違ったら挨拶する程度で、本格的に会話を交わすのは実はこれが初めてだったりします。

手塚治虫に忌憚のない意見を進言、巨匠が激怒しても一歩も引かなかった逸話など、武勇伝も数知れず。手塚さんはそのとき「いくら僕が天才だって、できることとできないことがあるんだ!」と大声で怒鳴ったそうですが、長崎さんは冷静に(この人、やっぱり自分が天才だと自覚してたんだ…)と、心の中で考えていたというエピソードなんか、いかにもこの人らしい。

僕も昔から長崎さんには「コワモテで、自信家で、物事に動じない人」というイメージがあっただけに、会う前は内心ビビリが入っていたのは事実なんですが、いざ会ってみると会社員時代とはまた違う気さくな面をのぞかせてくれました。フリーになって、今までとは違う苦労を味わったとかで、人間が丸くなったのでしょうか。ちょっと失礼な書き方になってしまいましたが。

正直、ひさびさに手応えのあるインタビューがとれたという感触があります。まあインタビューというより、「マンガと編集」をめぐっての対談に近いものになってしまいましたが。

インタビュー中、俺が「要するに長崎さんと浦沢さんは、共犯関係ですね」と言ったとき、この「共犯関係」という言葉がえらくお気に召したようで、向こうから「インタビューのタイトルに使ったらどうですか」とまで言われました。実はこれ、「たけくまメモ」でも一度使った言葉だったりするのですが(正確には「共犯者」)。

http://memo.takekuma.jp/blog/2005/03/post_2.html

インタビューそのものは、4月10日発売の「インビテーション」(ぴあ)という雑誌に掲載予定です。ご期待ください。

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| コメント(12)

“長崎尚志さんに会ってきた” への12件のフィードバック

  1. とおりすがり より:

    原作/協力/監修/
    どの肩書きだと印税がもらえるのかよくわからん今日このごろです。

  2.     より:

    いま20世紀少年を読んでいたのでタイムリーな記事に驚きました。
    18日の朝カルに行くので、是非この取材のことも語って欲しいです。

  3. より:

    「マンガプロデューサー」でググると、
    竹熊さんの名前が出てきたんですけど(笑)
    肩書きとして編集家を昔から使用されているので、
    プロデューサーを自称されたことはないんでしょうけど。
    長崎氏もそうだし、樹林氏といい、大塚氏といい
    編集者出身者のプロデューサーは、
    複数のペンネームを使い分けて
    常人の数倍の仕事量をこなしているのが
    すごいと思います。
    (最近大塚氏はペンネームは使っていませんが)

  4. 長谷邦夫 より:

    もうすぐ『PLUTO』3が出るんですよね。
    タイミングよく、そして大いに興味ある
    <対談>的インタビューですね。
    楽しみだ。
    忘れぬようメモしとこっと。

  5. 遥海 より:

    エンタメ乞食の私としては、最終消費者である私たちに最良のものを届けてくれれば、
    モーマンタイなところがあります。
    編集者と漫画家の間に深い信頼があろうがなかろうが知ったことではないと。
    それこそ80年代を席巻した楽屋オチブームはまさに悪しき共犯関係の典型ですよね。
    もはやひとりの天才が世間をあっと言わせるなんていうのは夢物語なんでしょうかね・・・。

  6. kamikitazawa より:

    >共犯
    イヤ、コレは、悪いとか良いとかそういうイミではまーたくなく、ハゲシく70年代的なコトバではありますまいか?! 「革命」とかそーゆー語彙が生きていた時代の言葉というか、革命家としての(!)故・竹中労&平岡正明氏的な用語というか。
    あ、いや、「今だって言い得て妙!」ということもよーく解かりますが。

  7. syuu より:

    >もうすぐ『PLUTO』3が出るんですよね。
    えっ。楽しみです。
    1巻は『地上最大のロボット』がついてたので、でかい方も買ってしまいました。
    今度はどんな付録がつくのかな。。

  8. 実は民主党のやろうとしてることは維新なのかナーと思う今日この頃なので、革命がまたインになっても驚きません…選挙による革命なら、納得する向きも少なくないでしょうし。無血であることの意味の重要性は、よく考えないといけないですよね。そして、現権力の腐敗と。
    プルートは、ノース2号がやられたところが最高でした。もう2年前ですね。ウランちゃんがもっとryゲフゲフとか、コバルトはぁ?とか、突っ込みどこはあります…今月載らなかったですね…。
    ていうより、たけくまさんの影響力の凄さを思い知っております…何でかとは申しませんが。ありがたいです。どうもありがとうございますm(_ _)m

  9. apg より:

    浦沢直樹は「ぐは!」が多すぎます。
    1ページのなかで、三回位「ぐは!」が
    でたときは、わざとやってんのかと思いました。

  10. apg より:

    こめ

  11. apg より:

    あ、復旧したんですね!

  12. ぼぼ より:

    面白いものになりそうですね。
    楽しみです。
    「共犯者」という表現、私も好きです。
    本来、インタビュアーとインタビューを受ける者との関係もまな板と鯉じゃなくて「共犯者」が理想なんですが、
    大抵の場合が、
    インタビュアーがインタビューを受ける本人と
    別分野の部外者ですから、それだけの関係を
    構築できないんですね。
    今回は、ある意味、小学館に世話になった同分野の先輩後輩同士だから「対談」に近い「共犯関係」が築けたんでしょうね。
    こういうシンパシーは幸せですね。
    まずは、折角の「共犯者」を使ったよいタイトルのコピーを期待してます。

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