たけくまメモMANIAX

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2007年2月8日

あれが“死”か。(2)

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そういえば先日、ある見舞客から「人生観が変わったでしょう?」と問いかけられた。要するに死の一歩手前を経験したのだから、それなりにものの見方だとか価値観が変化したのだろうと言うのだ。

なるほど、命に関わる体験をして、信心に目覚めたり、それなりに信奉していた価値観がコペルニクス的転換を遂げたという人は多そうだ。俺にも、何かそういった変化が起きたなら劇的で面白いと思う。それで自分の胸に手を当ててしばらく考えてみたのだが、残念ながらまだそういった変化はなさそうだ。少なくとも俺の場合、病気前と病気後で性格や考え方にほぼ変わりはない、とこの場で断言したいと思う。

そうした心境の変化について言うなら、あくまで俺の場合、仕事がスランプに陥った時期のほうが「変化」は大きかった気がする。俺はまだ未経験だが、子供を持っても変化は大きいだろうと思う。そいつが成長するまで面倒をみなければならないという「責任」が発生するからだ。これは大変なことだ。

とにかく考え方に変わりはない。これは確かだが、まったく変わってないかというとそれも嘘になるのだ。うまく説明できるか表現が難しいが、病気以前から持っていた漠然とした考えや、なかなか決断できずに迷っていた物事が、病気を機に確信に変わったというか、迷いがなくなったというか、とにかくなかなか手をつけずにいたものにさっさと手をつけてしまおうという思いが強くなった。変化といえば、これが最大の変化だろう。

要するに俺の人生にはあまり「時間がない」と思えてきたのだ。実際には明日死ぬかもしれないし、死ぬのは40年先かもしれない。その意味では病気以前と状況は何一つ変わりはないのだが。しかし今回の病気によって「人間って案外簡単に逝っちゃうんだな」という実感がもてたことが大きいのだと思う。

もちろんこうした考えは、病気以前からあるにはあったのである。しかしそれは漠然としたというか、観念的なもので、今回それにリアルな実感が持てたというか、一本芯が通ったという感じなのである。

明日死ぬのか40年後に死ぬのか、誰にもわからないのだから、以前は漠然と抱いていた「人生、まだ時間はある」という根拠のない考えはとても持てなくなった。明日もし死ぬのだとしたら、それはもうどうしようもないが、余命が1年か2年だと思って生活するとしよう。そうなったら俺は、「本当にやりたいこと」「本当に好きなこと」しか、たぶんやらないと思う。やりたいことをすべてやり尽くして死ぬことは、余命が何十年あっても不可能だろう。だったらその途中でもいい。なにもやらずに死ぬよりはましだと思えるのだ。

もしかして俺は、ものすごく贅沢なことを書いているのかもしれない。実現不可能な夢物語を書いているのかもしれない。でも「50過ぎたら好きなことやって死にたい」とは、40歳を過ぎた頃から漠然と考えていたことである。

一度、そのことを夏目房之介さんに話したら、「俺もそれは考えた。誰でも一度は考えるんだよ。でも、いざ50過ぎたら、そういう考えはどこかに行っちゃうんだよ」と返事が返ってきた。現実に横たわる生活のリアリズムを目の前にすれば、誰でも「好きなことだけやりたい」なんて悠長な考えは持てなくなるのだろう。

しかし俺は今、結構本気で考えている。たぶん、妻子がいないせいもあると思うが。今、「本当にやりたい事」を絞り込むなら3~4個あって、いずれもライフワークになりそうな勢いだ。たぶん死ぬまでに完成を見ることはないだろうが。それでも構わないのでそろそろ始めてみようかと思っている。ちょっと抽象的な書き方で申し訳ないが、未来の仕事の話なので今はぼかした表現でお許し願いたい。ちなみに、「やりたいこと」のひとつは既に始めている。このブログがそれである。[07’02/07記]

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| コメント(37)

“あれが“死”か。(2)” への37件のフィードバック

  1. apg より:

    死にかけることで得る収穫とは
    まさに「それ」だと思います。
    頭で分かっていても、
    実感が持てないのが現実ですよね。
    しかし本当の現実はそっちじゃなくて
    「50年なんてあっというま」が
    本当のリアルですもんね。
    アップル社の元CEOも
    たけくま先生と同じことを講演で言ったそうで。
    心からの「実感」が時として月並みになってしまうのは
    それが「真理」だからですよね。
    しかしだからといって皆がそのように
    開眼してしまっては、組織に盲従する人間が
    いなくなってしまいますから
    それはそれで困る人もいるかも知れないですが。

  2. たいこ より:

    やっぱり竹熊さんは
    しあわせな人だー。
    好きなことだけして生きる。
    いろんなことを経て言える言葉ですね。
    これからも応援してます。

  3. ジョナサン上田 より:

    「本当にやりたいこと」で「未来の仕事」。
    ん、気にならずにはいられません。

  4. Aa より:

    つまらない。

  5. みぞれ より:

    全く偶然にここへ来てしまったのですが、
    (竹熊さんのお名前は存じておりましたけど)
    脳梗塞で闘病中ということで、驚いてつい読みふけってしまいました。
    うちの母は、脳梗塞で倒れてからリハビリを開始した直後、ほかの身体的状況(心臓疾患)のためにそのリハビリを続けることが出来なくなりました。
    「まだ最悪ではない」という言葉、本当にその通りだと思います。
    車椅子に乗れる人、字が書ける人、自分の言葉で言いたいことを伝えられる状況にある人、みんなかなり幸せです。
    おおっぴらにそういうことを言うと、いろんな人から怒られそうで、普段は言えないんですけど。
    ぜひ、やりたいこと、やっちゃってください。

  6. 夏目房之介 より:

    >夏目房之介さんに話したら、「俺もそれは考えた。誰でも一度は考えるんだよ。でも、いざ50過ぎたら、そういう考えはどこかに行っちゃうんだよ」と返事が
    えと、どういう文脈だったか記憶はないんですが、僕はそういう考えのもとにマンガ表現論やることになったんです。死ぬときに悔いをだきるだけ残さないって感じでね。「どこかに行っちゃう」のほうは記憶がないなー。

  7. 夏目房之介 より:

    あ、たけくまさん、少しよくなりましたか?
    心配したよ。ただ、みんなすごい勢いで書いてたんで控えましたが、何せ、不幸中の幸い。よかった。

  8. たにしんいち より:

    面白かった。
    というか少しうらやましくなったほどだった

  9. ASA より:

    なんていうのか、生きてて当然と思っていたら、死は実はすぐそばにいるんですよね。
    固い地面に立ってるつもりでいたら、実は薄氷の上だったというか。
    死を遠ざけて生きていると、生きてる実感って湧かないもんなんですよね。
    知った方が幸せなのか、知らない方が幸せなのか。
    ワタシは逆に、人並みに奥さんもらって子供作ろうと思いました。まだ一歩も実現に近づいていませんが(笑)

  10. うに より:

    老人になると宗教にがっぽりはまるのは死後が恐ろしかったり、共感できる人を探してるからなのだとか。
    自分を信じれなくなったら終わりなのかもしれない

  11. シャック より:

    ブログは確かに生原稿をずんずん読める面白さが普通以上に期待する読み物ですね。この後、突然消える可能性もあるし。この他に興そうとされてるライフワークに期待します。
    千人斬りとか新雑誌の創刊とかバカ田大学設立とかでしょうか。

  12. トロ~ロ より:

    故・開高健氏は30歳過ぎの頃に従軍記者としてベトナムへ派遣中、南ベトナム政府軍のパトロールに同行して待ち伏せに遭い、200名中17名のみ生還(戦闘中は死を覚悟した)という凄絶な体験をして帰国。まさに九死に一生を得た訳です。
    「これからの人生は好きなことしかやらん」と決意したものの、人生のしがらみと文学の深い深い「闇」に囚われて思うままには生きられず、筆の運びにも満足を覚えず、余技の釣魚行とエッセイで、人口に膾炙して行きます。
    死の病床において「チンギスハンの墓捜しプロジェクト」への応援原稿を、手元に原稿なしの状態で、全くよどみない話しぶりで口述筆記したと伝え聞きます。享年58歳。
    現在、医学は進歩しました。竹熊さんも死より戻ってきました。
    リハビリ(=努力)は必ず報われます。
    竹熊さんの復活の日を待ち望みつつ応援し続けます。

  13. ほうとうひろし より:

    かっこいい!

  14. とおりすがり より:

    全身麻酔かけられたら、寝ているときの意識なんてなにもないですよね。
    たけくまさんの闘病の様子を拝見して、昔手術したときのことを思い出しました。漫画でよく使われる表現で「暗闇の中で自分の名前を呼ばれ、うっすらと気がつく」...全身麻酔から覚める時って、まさにこれですね。
    病気は違えど、たけくまさんの感じた感覚ってこんな感じっだたのでは?
    私には三途の川もこの世の果ても見えませんでしたよ。
    人間、年をとると(死は結構間近にあるな)と感じるもんです(私の場合か、笑)。でも、何かやらねばと思う反面、何もやらずに死んでいくのも一興かもとも思います。
    たぶん、何かをやらねばと思う人は自分の足跡を他の人が生きいている「この世」に残していきたいと思うんじゃないでしょうか。私は「死んだら自分の痕跡はすべて消したい=自分はこの世にいなかったことにしてもらっても良い」みたいなことを望んでいますが、それでも残りの人生は自分の好きなように生きたいという気持ちがあり、ここらへんは万人共通の願いなんでしょうね。
    とにかく、たけくまさんがこれからも健康で長生きして、面白い情報を発信してくれることを待ってます。ガンバです!

  15. たけくま より:

    >夏目さん
    去年かおととしか、とにかく、比較的最近の話でしたよ。どこで聞いたかわすれましたが、なにかで会ったおりに。夏目さんの言葉、記憶で書いたので正確ではないかもしれませんが、だいたいそういうニュアンスだったように記憶しております。

  16. がんばってください より:

    多分いろんな文学者が、そう言う気持ちを経験しておるのでしょうが今回のお話は僕の大好きな「戦争と平和」の主人公が死ぬ寸前に思う境地に似ているように思いました。
    小説なんて数えられるほどしか読んでないので馬鹿な意見だろうとは思いますが、そんな風に思えました。
    実は僕もちょっと前にちょいと大病をわずらいまして腹かっさばいて斬ったり張ったりされて、退院して自由に生きたいと思ったんですがうまくは行ってません。
    竹熊さんには是非どどーんとうまく行っていただきたいとつくづく思います。
    今後も面白い内容に期待しております。

  17. Mアさファ より:

    いま現在一生懸命つっぱっている人には
    つまらなく思えるのかなあ、と思いました。

  18. メルヘンひじきごはん より:

    地磁気異常に顕現している惑星難局がご都合主義的に判ってきたのでなんとなくライフワークが決まりつつあります。
    二酸化炭素に踊る方々は踊っていればよいと思います。それぞれのおつむにふさわしい生き方があるでしょう。説き伏せるのにも疲れました。

  19. Az より:

    ↑大丈夫か、最近。

  20. はぁ。もしここで黙ってずっと眺めていただいてたのなら勤さんのエントリの顛末で止めるか手を貸していただけてたらこうはなっていなかったでしょうな。
    まぁ、北朝鮮が何故か知らねど(みなさんにとって)矛を収めてくれそうでよかったですよね!
    俺は知るつもりもなかったリアルポリティクスというやつを身をもって知るはめになりましたよ。その痕跡はネットにゴロゴロしているので調べたければ調べればいいと思います。

  21. 俺は機密保持が苦痛なのでさっさと理化学研究所に反物質を核凌駕の暗黙抑止力効果発揮量以上溜め込んでほしいです。ここで誠実なアナウンスがなされないといささか困ったことになりますな。だから、九条を維持しなきゃね。

  22. Aa より:

    伊豆半島南端に位置する南伊豆下賀茂(しもがも)温泉は温暖な気候と海と緑に囲まれた豊かな自然を堪能できる、安らぎに満ちた温泉観光地です。
    この機会に露天風呂の宿九条(ぐじょう)にお越しくださる事を心よりお待ちいたしております。

  23. メルヘンひじきごはん より:

    おお。是非顎足つきでよろしく。

  24. 漫バカ日誌 より:

    “拳法”大会でも開催する?

  25. そりゃ安永先生をお呼びせにゃならんですな。

  26. さんぽ猫 より:

     今更とおしかりをうけそうですが、「impress:やじうまWatch」で拝見してびっくりしました。
     マイナス思考しがちな私は、竹熊先生の爪の垢を頂きたい位です。うらやましいなぁ。
     
     どうかお大事になさってください。
     そしていつか、月に行って地球に向かって「おしりぺんぺん」など、スク水を越えた超技をみせて下さいね。 

  27. Relaxの雑記 より:

    人間、人生一度しかない。

    心を動かされた。 たけくまメモ あれが“死”か。(1) たけくまメモ あれが“死”か。(2) ブログにも既に何度か書いたが、昨年12月19日、俺は2度目の脳梗塞発作を起こして死にかけた。 医者や親父の話を聞くと、脳出血も起こしていて本当に死の一歩手前まで行ったよ…

  28. Clue's pick-up より:

    あれが“死”か。

    あれが“死”か。(1) / (2) (ゴルゴ31より)  脳梗塞から生還された、…

  29. nomad より:

    明日またお見舞いに行きますです

  30. akio より:

    nomad兄貴と一緒に行くでやす

  31. にょろろん より:

    脳出血して死への考え方は、「生かされている」になりました。何か役に立てればと思って、私もブログにまとめてます。

  32. nomad より:

    えらいことや。
    ただいま現在、関東ローカル「アド街ック天国」(TV東京)で厚木七沢温泉郷の特集番組をしてますがな。
    またそれがおいしそうだったり「明日ならお得!」だったりしてるのですよ。
    「温泉芸者のラップ」っつーのもあた。
    なんじゃそら。わざとか。
    とりあえず明日は早めに出てZUNDOでラーメンだ。>影響されとるやんけ

  33. nomad より:

    ただいま行ってまいりました。
    えらいことだった。東京~厚木間29km渋滞ですよ。どれだけのことだ。
    おまいらそんなにラーメン食いたいか。2時にラーメン屋の前で30人行列って、ロシアか。
    自宅を11時前に出てついたのが3時。
    これだけでもたけくま人気がわかろうというものです。
    で、たけくまさん、順調です。
    相変わらず喋り始めたら止まらない(笑)
    来週は温泉にも入れるということです。
    なんでも、温泉に入れるようになるというのは近々年季が明ける兆候なのだとか。
    兄貴、ご苦労さまでした。
    ということで、たけくまさんをネタにしても、もう皆さん大丈夫です。
    「こんな感じで面会した」という絵柄に大友のファイアーボールの兄さんが手術台から起き上がる場面を使ってもダイジョブです。

  34. Aa より:

    >ファイアーボールの兄さんが手術台から起き上がる
    夢にでるからヤメテ~

  35. 門弟廃村 より:

    >大友のファイアーボールの兄さんが手術台から起き上がる
    手術は楽そうだよな。臓器別に起き上がってくれるから。
    ・・しかしその後、リハビリセンター大破壊!

  36. えば より:

    「ヱヴァ」総監督 劇場で“緊急声明”
    goo 映画 – 6時間前
    10年ぶりに映画化される大ヒットアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」について、庵野(あんの)秀明総監督(46)が17日に全国の劇場で「緊急声明」を発表する。これまで1度も口を開かなかった庵野監督が語ることで、エヴァ再生を印象づける狙い。新作は4部作。 …

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